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《心室細動》は突然に〜入院生活スタート編〜

突然《心室細動》が起こり心停止するも、運良く処置を迅速に行うことができて、助かることができた。*1その後の病院に運び込まれ、入院生活が始まった。

絶対安静系男子

気がつくと僕は集中治療室(ICU)にいた。身体はベッドに横になっている。足首と手の甲、腕に点滴の針が刺さっている。その他にも腕には血圧を測るバンドが巻き付いていて、指には血中酸素濃度計がついてる。右肩の下あたりには AED のパットが付いていて、心電図モニター用のコードが3つに分かれて上半身にくっついている。鼻には酸素チューブがかかっていて、尿道には管が入っている。

首をひねると、ベッド横には様々な医療機器が並んでいて、ドラマでよく見る心電図のモニターもそこにあった。ドラマのように、この波形が一直線にならないことを願った。隣のベッドとの間はカーテンで仕切られている。となりの様子は見えないが、音が筒抜けだった。

最初の一日目は強烈な疲労感でひたすらに眠っていたが、二日目からはだいぶ意識がはっきりとしてきた。定期的に面会時間になると両親が来てくれた。そのおかげで徐々に自分の状況が飲み込めてくる。それでも"理解"できるだけであって、こんな姿になっても"実感"できる、とまではいかなかった。

トイレに行きたいことをうったえると、看護師さんが車いすをもってきた。

「いや、自分で歩いていきますよ」
「安静状態なので、だめです。これでいきましょう」

僕としては、どこも痛くもないし、自分は大した病人でもないと思っていたので、驚いた。車いすを初体験した。身体についている機器を外したり、移動させたりして、ようやく車いすに乗って、トイレまで連れて行ってもらう。

ICU の雰囲気

車いすでトイレまで移動する。その時に初めて、ICU の中の様子が分かった。何台ものベッドがカーテンに隔たれてズラと並んでる。チラりと覗きみると、お年寄りが横になっている。どのベッドもお年寄り、お年寄り、お年寄りだ。僕と同じような年齢の人は見かけることはできなかった。( やはり僕のような人は珍しいのか? ) ICU は基本的にうるさいと言ったほうがいいかもしれない。四方から機械音がなっていたり、人のうめき声が聞こえる。患者さんからの呼び出し音で、看護師さん達は走り回る。しかし、それほど気にはならなかった。僕は神経質な方だ。でも、自分でも不思議に思うがあまり音が気にならなかった。自分だけが苦しい状況にないとうことを確認できることが、逆に僕を安心させたのかもしれない。しかし同時に、見えてる世界がお年寄りと病人だらけになったことは、なんとも言えない悲しい気持ちになった。

食事は意外にも美味しかった。最近の病院食は昔と違うのか、それともこの病院が近代的なのかはわからないが。噂で聞くほどの味気なさはそこにはなく、"普通に美味しい"ものだった。入院生活では食事が最大の楽しみになった。

三日目あたりから、父がノート(便箋のようなもの)とペンを持ってきくれた。僕は毎日の日記をそこに書くことにした。その日あったことや感じたことなどだ。これはとても良い効果をもたらした。気持ちの整理に役に立ったのだ。入院生活中は毎日日記を書いた。

また会社の上司と先輩に、仕事を簡単な引き継ぎ内容を書いて、父に渡すように頼んだ。これで仕事のことは気にしないですむ。

転院

数日が経ち転院の日になった。別の病院でより詳しく診断してもらい、処置を決めてもらう。もしかしたら、手術になるかもしれない、とのことを聞いた。僕は不安にかられた。入院をしたこともなければ、手術もしたことがない。手術は怖い。できればしたくない。転院先での判断になるから、まだどうなるかはハッキリとはしてない。そうだ、まだ決まったわけではない。きっと大したことではないから、5日ぐらい入院したら、家に帰れるだろう。


移動するために、小型の心電図モニターに機器を切り替える。僕は病室からベッドに寝たまま運ばれた。心電図モニターも一緒にベッドの足元に乗っている。別の病院への移動は、救急車だった。ベッドから救急車の担架みたいなやつに移された。念のためにお医者さんも一緒に救急車に乗って移動する。僕は横になったままなので、外の風景を覗くことができなかった。見えるのは自分の心電図ぐらい。入院中もあまり外が見えなかったので、随分と外を見ていない。それでも、信号待ちでの停止や、カーブに差し掛かるときの減速から、外の道の様子を想像し、自分が外に出れたことを実感した。

ピットイン

新たな病院は、まったく前の病院とは様子が異なっていた。救急車で到着し、院内に運ばれるやいなや、僕はそのギャップに驚いた。それは完全に "ピットイン" だった。僕は、ものすごい勢いで服を脱がされ(このときは私服)、一瞬で病衣となった。その間に、入れ替わり立ち代りに看護師さんや、研修医さんが僕の周りにやってきて、左右の腕から2本の採血が終わっていて、点滴用の針が刺され、インフルエンザの検査のための綿棒を鼻の奥に入れられ、心臓エコーが終わり、胸部のレントゲンが済まされた。あとは尿検査だけだ。その間に医師から手術をする必要があることを告げられ、明日には心臓カテーテル検査をすることを告げられた。僕はすぐに帰れると思っていた自分の考えが甘かったことを理解した。あまりのスピードに「手術は嫌じゃ!」と言う暇すらなかった。そしてすぐに ICU に移された。まさか ICU であんなことが起こるなんて!僕はこの時はまだ想像もしていなかった。

気が向いたら続き書きます。